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読書感想文/摩亜 [ ┣ブレイブストーリー]

ちまちま読むと言っていた『ブレイブ・ストーリー』を読み終えました。
上巻の現世の部分はまだ細切れで読んでいても良かったんだけど、幻界に行ってからは映画に出ないキャラや土地が多く、ちまちま読んでいると固有名詞が分からなくなり前に戻って読み直すという手間がかかるから、中~下巻は割と一気に読みました。
夏休みも終わりと言う事で、以下感想文。
当然ネタばれ有り。



やはり文庫で3巻の量を2時間の映画にしたので、映画と原作は別物と言っていいほど内容が違いました。
映画は『ワタルの勇気のハナシ=ファンタジー』、原作は『物事の裏表を赤裸々に見た亘のハナシ=リアル』かな。
映画での疑問とか端折っていておかしいなって部分は、全部納得のいく形になっていました。うん。
亘の可愛らしさとヘタレ度は50%減、賢さと繊細さは80%増。
ミツル(美鶴)のツンツン度は30%増、デレ度40%減。
ジョゾの可愛さ60%減。
女神様の美しさ30%増。
さて、総括。
原作はとてもリアルでしたね。胸が痛くなるほど、リアルです。
上巻の、家庭が崩壊していく様、亘の崩壊、お母さんの崩壊、美鶴が幻界に行って変えたい過去、美鶴の自殺未遂の過去、美鶴の叔母さんのギリギリな描写は、子供より大人の方が読んでいて痛いと思うのではないかな。その辺が、とても丁寧に描かれています。そしてとても痛かったです。抜けない棘が刺さったように痛かった。
導入部のこの丁寧な描写が有って、嘆きの沼~置き去りにした分身という図式が綺麗に成り立ってると思いました。
さて、映画を観ていて、亘が“小学生”である理由が分からなかったんだけど、原作を読んでいると“小学生でなければならない”理由が分かる。現世でも幻界でも、幼くて一途で狭い世界に住む子供でなければならなかったと説明がはっきりしている。
と言っても、原作の方では可愛らしさ半減と書いたくらい、ワタルも(ミツルは当然として)子供らしさの欠けた、頭でっかちな部分が多々見受けられました。屁理屈のこね方が子供らしくないんですよね~。
映画で疑問に思った事・其の二。なぜあの状況でお母さんを放ったらかして、幻界に行ったのか?
それも原作の方が分かりやすい。むしろ、原作をそのまま取り入れて欲しかった。
既に旅立っていたミツルが現世に戻れる数少ないチャンスのうちの1回を使って、亘に会いに来たとか(それも時期から考えると、序盤の宝玉入手時だと思う)。『真実の鏡を覗いたら様子が見えた』とか『借りを返しに』とか口では言いながら、亘の惨状を見かねて、亘を旅人にするための周到な用意を全てやってくれた事とか。ミツルがこの時の気持ちを忘れなければ、きっと間違えなかったと思うから。
それから、本来二人の幻界は別のものであって、ワタルにはミツルを捜す事が出来ないハズとか、そういう設定を強調しておいて欲しかったな。
そうすれば、二人の幻界がシンクロする部分が有る理由とか、ワタルの後悔―ミツルと一緒に旅をしていなかった事は間違いだったと自分に言いきかせたり―とか……なんてのが、生きてくるし、感動できたんだけどな。
映画の最後に出てきたワタルやミツルの分身が、実は何なのか。どこでその分身と分かれたのかとかも、映画で出てきたら。……子供向けファンタジーじゃ無理か。
ヒト柱の話とかカッツとかミツルとか、やっぱり分かりやすいHappy Endの話では、無理なんだろうなあ。
ロンメル隊長は大好きなんですけど、映画には出てこなかったっけね。あの役割だから……無理なんだろうな。単なる厳格な隊長では意味無いしね。

とりあえず、当然の事ながら映画より読み応えは有ったし、読み終わった後で考える事も多かったです。幻界と言いながら、実は人間世界を映している鏡のようです。
面白かったですよ、とても。映画は映画で面白かった、原作は原作で面白い。
私は、原作の方が映画よりも好きだ。痛さを感じた分だけ、リアルに響いたと言う感じでした。

ヴェスナ・エスタ・ホリシア。
それはきっと千年後に叶う。








映画のエンディングでは、美鶴の記憶が有る無いに関わらず亘が抱きつきそうだと想像させられるけど、原作だと千年後に美鶴だけが記憶を持っていて、何度か生まれ変わった亘に会いそうな気がするんだよね。
でもって、ツンデレ君だから何も言えない、けど、亘が気になって仕方無い。亘が気づかないとムカついてくる……みたいな?

ああ、いいなあ。千年ロマン。



ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)

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  • 作者: 宮部 みゆき
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ブレイブ・ストーリー (中) (角川文庫)

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ブレイブ・ストーリー (下) (角川文庫)

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