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あはれ蚊/ゆら [◆日記・雑感]

外では、近所の人の打ち上げる花火の音がします。
うちの犬は花火や雷で吠えるので、それを止めるために母がベランダに出ました。
その母がおいで、とわたしに声をかけました。
ベランダに出ていくと、網戸に小さな光が。
弱々しい光は、蛍でした。
母共々びっくりしました。
このあたりでは蛍は珍しくはありません。
蛍で観光客を呼び込むなんてことはしていませんが、水辺に行けば数は多くはないけれど、蛍を見ることが出来ます。
ただ、この辺で蛍が見られる時期は6月初旬から中旬あたりまでの2週間ほど。
今は7月中旬も終わり。季節はずれもいいところです。
その証拠に、その蛍は普通のこのあたりで見られるものより一回りほど小さく、また飛ぶそぶりはおろか動くそぶりすらみせませんでした。
その蛍を見ているとふと、「あはれ蚊」という言葉を思い出しました。
あはれ蚊っていうのは、秋になって飛んでいる弱々しい季節はずれの蚊を、古人はあはれ蚊と呼んで、虫除けを焚いたり手で打ったりしなかった、という話なのですが(近年の蚊は季節はずれであろうがなんだろうが元気いっぱいだとかいう意見は置いておきまして)。
蚊と蛍じゃ人に好かれている度合いがまったく正反対ですけど、今ここにいる季節はずれのはかなさにおいては同様ではないかと感じました。
蛍は成虫になってからはものを食べません。露だけを飲み、体内の栄養分だけで生きていき、そして体の小さなオスから死んでいきます。光が明滅するのは蛍が呼吸しているからで、呼吸が止まって死んでいく時は光が灯ったままになるのだそうです。
なんだかせつないとかはかないとか思える部分をたくさん持ってる生き物ですね、蛍って。
柄にもなくそう言うことを思ったひとときでした。